コンサル会社は就活生にとってのモラトリアムなのか?

就職活動のシーズンになると、あちらこちらで見かけるのが「就職先人気度ランキング」というもの。ちらちら見ていると面白いもので、サービスラインやインダストリーによって事情が異なるため単純比較はできませんが、業界内のプレゼンスとこの手の人気度ランキングとは必ずしも一致しないもんだなぁと思います。

さて、そんな就職人気度ランキングに関する記事の中で、ふと目に留まったのが、BUSINESS INSIDERのこの一節。

「3年いれば、どこへ転職してもやっていける」(人材サービス担当者)とも言われる業界で、汎用性の高いスキルを身につけたい、という学生の思惑がうかがえる。一方、やりたい事が見つからない学生が、モラトリアム期間を延ばすために選択するケースも……。

「止まらない就活でのコンサル人気、学生が求めるのはスキルとモラトリアム|BUSINESS INSIDER」

とりあえず汎用的なスキルが身につき、かつ色々な業界を経験してみたい、という学生にとって、コンサルティング業界は「モラトリアム」期間だそうなのです。そのような学生が実際にどれくらいいるのかは分かりませんが、学生のうちから、何年後くらいに転職して、キャリアアップしていくというプランを考えていること自体は、素晴らしいことだと思います。

ただ、新卒でコンサルティング会社に入社して腕を磨き、やりたいことを見つけて3~5年後に転職・・・というのは現実的に可能なのでしょうか。自分自身も数多く転職し、またコンサル業界から去ったり戻ったりしている友人たちの体験談から、よくある問題とその処方箋を考えてみたいと思います。

コンサル業界から起業・ベンチャーは「万人にはオススメしづらい」

しばしば目にするのが、コンサルティングファームでスキルアップをした後、自ら起業したり、創業間もないベンチャーに就職したい!というキャリアパスです。巷では、コンサルになれば人よりも早くスキルが付くと言われているようで、基礎体力をつけた後に自分でビジネスをやってみたい、ということなのでしょうか。

起業・ベンチャー志向自体はいいことだと思うのですが、このキャリアパスは慎重に事を進めなければいけないと思います。まずコンサル業界のクライアントは、ヒト・モノ・カネともに潤沢に揃った実力派の企業を相手にすることが多く、ヒトもモノもカネも無いスタートアップ企業とは事業環境が大いに違います。そんな異なる環境の中で身に着けた経験やスキルが、果たしてどれほどスタートアップ企業で通用するのかは、冷静に考える必要があります。

また、私自身スタートアップ企業の立ち上げに関わったり、友人がコンサル→ベンチャー企業に行ったりするのを見ていて思うのが、コンサルとベンチャーの仕事内容の違いです。コンサル会社ではある程度の役職までは「良い仕事、質の高い仕事」をきっちりこなしていれば、少なくともそれなりの評価が得られます。これに対し、ベンチャー企業では「お客さんに買ってもらう仕事」をしなければ、自分のお給料すら稼げなくなってしまいます(ベンチャーだから質は高くなくて良い、という意味ではなく、質が高くても売れなければ意味がない、という意味)。そのため、ベンチャー企業では元コンサルよりも元営業の方の方が、バリバリ活躍しているというケースが多いように思います。

それらを知った上でも起業したいんだ!という熱い思いを持っている場合は、コンサルティングファームに入って遠回りするよりも、さっさと事業を立ち上げることをオススメします。コンサルになったとしても、世の中のことがちょっと知れて、貯金ができるくらいのメリットしか無いのではと思います。もしくは、事業会社の事業企画といった部門とかの方が、よほど将来のためになるのではないでしょうか。

コンサル業界から事業会社に転職する際、最も問題となることとは

起業やベンチャー企業への転職に比べると、事業会社への転職は比較的ハードルが低いように見えます。しかし、コンサル業界から別の業界に転職する際に、最も分かりやすく問題となるのが「お給料と生活レベル」のこと。一般的にコンサル業界は他業界よりも給与面で優れていることが多く、いわゆる事業会社に転職すると給与額が2~3割落ちることもまま起こりえます。最近では人手不足を背景に、事業会社でも結構な額をオファーすることもあるとも聞きますが、そのためにはやはりそれなりの実績が求められ、決して平坦な道ではありません。

と書くと、「やりたいことができるなら、給与が下がっても問題ない」と思われるかも知れませんが、一度経験した生活レベルを落とすことはそう簡単ではありません。普段は何とも思わなくても、コンサル時代の同期や同僚と久々の飲み会であってみると、得も言われぬ思いが・・・やっぱりコンサル業界に戻ろうかな・・・という話を聞いたのは、一度や二度ではありません。ですので、やりたいことがやれるかどうかに加えて、お給料面でもきちんと満足できる就職先をじっくり探す、それも入社時点での給与だけでなく今後の伸びしろも含めて検討する、ということが後々の幸福感に関わってくると思います。そのために、まずコンサルファームできっちり成果を出すよう一定の努力が必要でしょう…あれ?モラトリアムと言えるほど簡単ではないような。

ちなみに、お給料問題は起業やベンチャーでもバッチリ当てはまります。が、起業の場合、最初のうちは無給で働くことになるかも、くらいの覚悟がなければ、続けること自体が難しいと思います。そのため、毎月お給料が出る環境が良いのであれば、そもそも起業等はやめといた方が良いと思います。

コンサルはモラトリアムでも、ポストコンサルは意外と大変

いかがでしたでしょうか。コンサル時代はモラトリアムでいられても、ポストコンサルは色々と悩ましい問題が立ちはだかります。後悔することのないよう、キャリア設計はぜひ計画的に。