賃貸派の最右翼だった自分が分譲マンションを購入してみた

世の中には永遠に答えの出ない論争があります。例えば、合コンでの奢り奢られ論争。例えば、SMAPの中で誰が一番カッコいいのか論争。そして、自宅の賃貸vs購入論争です。

生まれてこの方、私は稲垣吾郎派であり、自宅は賃貸派でした(合コンはほとんど呼んでもらえなかったので宗派も何もありませんでした)。そんな私が、とある物件の購入を5分で即決し、気づいたら不動産売買契約書にハンコを押していたものですから、人生はわからないものです。最右翼とも言えるほどに住宅購入を考えてこなかった私が、なぜ買うまでに至ったのか。その足跡を辿るために、編集部はアフリカの密林へと奥深く入っていくのでした。

残債<売却価格 となるマンション探しの旅

賃貸派の最右翼の時代に、拡声器越しに声高に叫んでいたシュプヒレコールが「住宅は経年劣化でバンバン価値が下がるものであり、買うだけで損をする!」というものでした。餃子の王将で油淋鶏(税抜き544円)よりも鶏のから揚げ(税抜き520円)を本能的に選んでしまうような貧乏性の私は、とかく金銭的な損をすることがスズメバチの次くらいに嫌なことであり、住宅の購入などもってのほか、油淋鶏はセレブの食べ物と考えていました。

しかし、周りの友人が住宅購入をしていくのを見るにつけ、物は試しと色々と調べてみたところ、物件によっては値下がり額が小さいために、ローン残債が売却価格よりも上回っているものも少なくないことがわかりました。なるほど、マンション購入は「残債<売却価格」を維持できるものを見つけるゲームなんだな、と思えてからは、住宅購入を前向きに捉えられるようになりました。

ちなみに、住宅購入党の中でも一戸建て原理主義とマンション教条主義とに分かれますが、以前住んでいた賃貸マンションで「24時間ごみ捨て可能」の便利さを味わっていたため、買うならマンションというのはすんなり決まりました。

でもリスクあるじゃん!という問いへの答え

しかし、「残債<売却価格」を狙うといっても、リスクは依然あるよね!という方もいらっしゃるかも知れません。自分の年収が下がる、リーマンショックやコロナショックのように世界的な不景気に見舞われるといったリスクは、もちろんゼロではありません。自宅購入のような大きな意思決定に際して、リスクとどのように向き合えばいいのでしょうか。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマンの著書「ファスト&スロー」によると、人間は良いことが起こる可能性と悪いことが起こる可能性を並べたときに、本能的に悪いことが起きる可能性のことを過大評価する傾向にあるそうです。また、確率論で考えると、「失敗したら人生終わる」という大博打を除いて、打席に立ち続ければ得をする期待値の方が大きいとのことです。

では、マンションを購入して人生が終わるのでしょうか?急に年収が減ったらどうする?という意見についても、人生終わるほど年収がガタ落ちした場合、賃貸だったとしてもちゃんと人生終わるので大丈夫です(大丈夫じゃないけど)。また、マンション市況が暴落して「残債>売却価格」となり売れなくなってしまった、という状況についても、そもそもマンション市況が暴落するようであれば日本経済がメッタメタで、荒廃した日本は暴力が支配する世界、弱い人間たちが苦しめられている中で一人の救世主・ケンシロウが立ち上がらざるを得ない状況にあるでしょうから、賃貸だったとしてもちゃんとあべし!となるので大丈夫です(大丈夫じゃないけど)。

もちろん、想定外の出来事で悪影響を被る可能性もあるでしょうが、それなりの貯金を継続的に蓄えておく、無茶なローンの借り入れはしない、といったリスクヘッジをしておけば、そうそう人生は終わりません。それでも金銭的な損が多少なりとも発生してしまう可能性はゼロにはできませんが、そうであってもいい家に住めたことによる満足感が得られるようなマンションを探せば、心穏やかでいられるはずです。油淋鶏は鶏のから揚げより高いですが、油淋鶏でしか得られない満足があるのです。つまりはそういうことです。

マンション探しの際に行うべきこと

とはいえ、あまりにズタボロな物件を買ってしまう訳にはいきません。誰も好き好んでキングボンビーを自宅に招きたくはないのです。私がマンション購入に際して実施しておいて良かったと感じることを挙げてみます。

マンション関係の書籍とブログを読みまくる

以前まで不動産業界にいい印象を持っていなかった理由のひとつに、情報の非対称性が著しいという点がありました。売り手と買い手が持っている情報量・知識量に違いがあり過ぎて、買い手側は適切な判断が非常に難しいのです。もちろん、売り主さんも悪人ではないという前提に立てば、情報を意図的に改ざんしたり隠したりといったことはしないなずでしょう。しかし、自らにとって不利な情報は積極的に公表するはずもありません。

そのため、まずは買い手側としてしっかり知識を身に着けることが重要です。もちろん売り手側と同等の知識量を付けることは不可能に近いでしょうが、それでも丸腰でラオウに向かうのはあまりに無謀です。体系的な知識を身に着けるという意味で本を数冊、また特定のマンションに対するレビューや最新情報を手に入れるという目的でマンションブログを読むことをオススメします。

私が読んだ書籍の中で、オススメはこちらです。

新築・中古問わずに内見しまくる

「百聞は一見に如かず」これにつきます。マンションの公式WebサイトやGoogleストリートビューなどでも豊富な情報が入る便利な現代ではありますが、やはり現物を見るのとは訳が違います。「そこまで興味ないなー」という物件でも、目に入ったものは片っ端から見ていくことをオススメします。営業さんからいろいろと説明を受けるだけでも勉強になりますし、何より現地を見てみるとむっちゃいいじゃん!というのが結構ありま

新築の場合は、青田買い(建物がまだ建っていない状態)のマンションのみではなく、竣工売りのパターンも見ることをオススメします。青田買いは販売期間の初期ですので、選べる間取りが多い、時期によってはオプションも付けられるといったメリットがあります。半面、建設地と異なる場所に建てられたモデルルームを見学することになり、モデルルームは良くも悪くもオプションてんこ盛りでお化粧されているので、現物見てガッカリということが起こらないとも限りません。竣工売りのものは建物の現物が見れますので、実際に住むイメージがつきやすいです。一方で販売の後期となりますので、選べる間取りが少ないというデメリットがあります。どちらも良し悪しありますので、とりあえず両方見ておきましょう。

また、中古も絶対に見ておいた方が良いと思います。日本では新築信仰が強いと言われますが、新築と比べてこの値段でこのクオリティ!?というのが結構あります。私も比較検討した中で、あそこにしてもよかったなーと思うマンションは中古であることの方が多いです。加えて、築〇年でマンションってこんな風になるのね、というのが体感値としてわかるのも有難かったです。マンションは管理を買えとはよく言ったもので、管理がしっかり行き届いている中古マンションは新築と遜色なかったり、逆に理事会で揉めたりしていると聞いていたマンションについてはいろいろと苦労の跡が見えたりします。ぜひ幅広に検討してみてください。

実際に賃貸→分譲マンションに引っ越してみての感想

と、色々と頭でっかちに書き並べてみましたが、実際に分譲マンションに引っ越してみた感想としては、控えめに言って最高です。賃貸マンションは基本的に大家さんを満足させるために建てるものであって、入居者を満足させるものではないと言います(もちろん入居者を満足させる工夫を凝らしている賃貸マンションは多数ありますが、やはりそれも入居者に長く入居していてもらうため、という目的だと思います)。一方で分譲マンションは基本的に買った人を満足させるために作られていると言われており、やはり作り込み具合が全然違います。デメリットとしては、なかなか家を出るモチベーションが湧かないことくらいでしょうか。

というわけで、私が賃貸派から購入派に寝返るまでの道のりを辿ってみました。何かの参考になりましたら幸いです。