資産としての分譲マンションと株・投信との違いとは

お金を増やしたい。お金を稼ぎたい。億万長者になりたい。これは全人類の共通の願望であり、長年ワタクシが追い求めているものでもございます。うなるほどの貯金があれば今すぐにでも沖縄に移住してなんくるないさー生活をするのに、と思いながら仕事に向かうことほど、メランコリックなブルースはありません。

私のような一般ピーポーが資産形成の手段として向かう先は、積み立て型の投資信託と不動産(分譲マンション)ではないでしょうか。興味深いのが、投信への投資を進める本を読むと不動産なんか買うべきじゃない!と断罪されており、不動産に関する本を読むと資産形成の正道は不動産にあり他はすべて邪道、と水と油のように書かれています。実際にそれぞれを所有してみると、なるほど確かにお互いの性格は全く異なり、考えるべきポイントも別なのだということがよく分かります。では、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

一般ピーポーが取りうる資産形成の手段

資産形成の手段は山ほどあり、カテゴリーとしては投資信託、債券、株式、不動産、REIT(不動産版投資信託的なもの)、金、外貨といった分け方になります。まず大前提として考えなければならないのが、一般ピーポーであるワタクシにはスタート時点において働いてもらうお金があまり多くはありません。また普段はサラリーマンとしての仕事も果たさねばならないため、年がら年中お金のお世話をしている訳にはいきません。ただしまだまだ働き盛りのため、時間を味方につけることは十分に可能です。

という要素を勘案し、お金には自律的に働いてもらい、時間をかけながら中リスク中リターンで資産形成を図っていくというのを基本方針として立てました。税制面のメリットも含めて考えると、ベタではありますが積み立てNISAやiDeCoで株式や投資信託・債券を買う、分譲マンションで資産形成を図るというあたりに落ち着きました(NISA/iDeCoはリターンに対する税制優遇、分譲マンションは住宅ローン減税)。

賃貸マンションへの投資も一時期考え、実際に物件探しに精を出していたこともありました。賃貸マンションの場合、リターンを得られるかどうかはいかにお買い得な物件を探し当てるかに尽きると考えています。しかし、そんなものは非常に希少であり探し当てるのがなかなか大変であること、また物件が見つかってからのプロセスも結構手がかかることを考えると、ネットで申し込みしてほったらかすだけのNISAやiDeCoには勝てんな・・・ということで見送りとしました。

35年ローンで1点ものフルスイングの不動産

株式・投資信託に関するほとんどの本で謳われているのが「卵はひとつの籠に盛るな(分散してリスクヘッジせよ)」という投資の大原則です。投資信託や株式を推奨する人からすると不動産が怖く見えるのが、不動産は一点ものに対して35年ローンでフルスイングをするという、卵だけでなく自分や家族の将来もひとつの籠に盛るという点ではないかと思います。

マンションであればまだ標準化パッケージの商品ですし、マンションが多く建設されているエリアは参考にできる市場データがありますが、一戸建てとなるとさらに個別具体性が高くなります。そのため、分散してリスクヘッジという考え方とは相反するのが不動産と考えています。

将来的な不動産の価値については、ネガティブな側面もあればポジティブな側面もあります。鉄道の新規路線開設や街全体の再開発といった計画が持ち上がれば価値の向上が望めますし、スーパーマーケットやショッピングモールの新規オープンによって売りやすくなったりといった効果があります。逆に自然災害による物件へのダメージや、街の開発によって眺望が悪くなってしまった、というリスクとも付き合っていかなければなりません。

住宅ローンという鬼レバレッジが使える

しかし自宅用の不動産には、株式・投資信託には逆立ちしてもできない技があります。それが住宅ローンです。会社にそれなりの期間在籍していれば、年収の6~8倍程度の資金を、変動金利であれば1%未満の金利で貸し出してくれるというのは、何かのチート技としか思えません。現在は資産形成に積極的に回す資金が無い人にとっては、これを利用しない手はないでしょう。

ちなみに、よく住宅購入をディスる論説として目にするのが「将来職を失ったらどうするのか」「年収が下がってローン返済できなくなったらどうするのか」というものです。しかし冷静に考えてみると「職を失うリスクがあるから住宅を買わない」というのは、キャリアにおけるリスクを全く別のカテゴリのもの(今回は住宅購入)で埋め合わせることであり、おかしな対策です。職を失うリスクへの優先的な対策は「継続的にスキルを身に着けいつでも転職・年収アップし続けられるようにする」ことだと考えています。

使用価値を考えることの楽しさと煩わしさ

私は今のところiDeCoで投資信託を積み立て続けているのですが、投資信託そのものに個人的な感情は一切湧いてきません。また、投資信託そのものから得られる価値は何もなく、毎月デジタルの数字がカウントアップされていくのを見守るだけです。

対して自宅用の不動産は、そのものに「住む」という使用価値があります。職場への通いやすさや、近隣の買い物の利便性に加えて、不動産がある街が好きかどうかといった、非常に主観的な評価も関わってきます。候補の物件をあれやこれやと選ぶのは純粋に楽しいですし、また住み続けていけば愛着も湧いてきます。不動産を資産形成の一手段として考えたときに、これらの要素がプラスになることもあれば、判断を鈍らせるマイナス要素として働くこともあるのは、大いに留意すべきポイントだと思います。

個人的な結論:両方持っとく

これまであれやこれやと両社の比較を考察してみましたが、私個人の結論としてはこれらを持って両者のどちらかを選ぶのではなく、お金の許す限りで両方持っておくのがベターだと考えています。不動産を敬遠しがちな株式・投資信託派が信じる「卵はひとつの籠に盛るな」という格言に基づけば、大事なお金たちを株式・投資信託のみの籠に盛るよりも良い結果が得られるのではと思っています。

ただし、資産という大ぐくりでは一緒でも、株式・投資信託と不動産は上記で考えてきたように全くの別世界となります。そのため、審美眼は普段から磨いていきたいところです。