人事コンサルが戯れにスタバとマックの戦略分析をしてみた

私は無類のスタバ好きであり、暇さえあれば緑の看板を探しています。コーヒーや店舗の雰囲気が好みなのはもちろんのこと、家・職場と異なるサードプレイスを目指して成長したという発想が好きで、よくスタバに出掛けてはお店のオペレーションがどう回っているのかを観察しながらコーヒーを楽しんでいます。

そんな私がオススメしたいスタバの楽しみ方は、マクドナルドのビジネスモデルとの違いに思いを馳せることです。同じ外食産業に属する両社ですが、それぞれの戦略はおよそ正反対のものであり、お店の様子を10分観察するだけで端々に戦略・オペレーションモデルの違いを見つけることができます。戦略の分析は楽しいものですが、資料を調べたり有識者に内部情報をヒアリングしたりなど、なにかと手間がかかるもの。スタバとマックであれば、それぞれのお店に10分いるだけで、その2つの戦略の一端を体感できる訳ですから、安上がりな趣味この上ありません。

ということで、専門は人事である私が戯れに、戦略コンサルの真似事をして、スタバとマックの戦略分析ごっこをしてみました。最後まで読むやいなや、スタバとマックに向かいたくなること請け合いです。

スタバとマックの大まかな方向性の違い

いきなり各論に入るとコーヒーとポテトの迷宮に迷い込むだけですので、両社がどのような戦略を取っているのか、ざくっと考えてみましょう。こういう時は横文字のフレームワークや、偉い人の経営理論とかを持ち出すとそれっぽくなりますので、経営コンサルのマイケル・トレーシーらが提唱した3つの価値基準を使ってみたいと思います。曰く市場で勝ち続ける企業は、下記3つの価値基準のいずれかをガッツリやっているそうです。

  • 製品リーダー戦略:卓越した製品によって競争優位性を保つもの
  • オペレーショナル・エクセレンス戦略:オペレーションの徹底的な効率化によって競争優位性を保つもの
  • カスタマー・インティマシー戦略:顧客ロイヤリティを高めることによって競争優位性を保つもの

なんか急に頭が良い感じの内容になってきましたね。この3つの価値基準で考えると、スタバは熱烈なファンを作ることによって競争優位性を保つカスタマー・インティマシー戦略でしょう。なんならコーヒーはタリーズの方が美味しいし(超主観)。顧客ロイヤリティを高めるためには、会社のブランディングへの好感を寄せてもらう施策や、おもてなし・ホスピタリティを発揮することが重要です。きっと。

マックは注文してから1分以内に写真とは似ても似つかないぺったんこのハンバーガーを提供していますので、オペレーションの効率化を突き詰めたオペレーショナル・エクセレンス戦略であると考えられます。オペレーション・エクセレンスの実現のためには、各オペレーションをストップウォッチで測り、秒単位で「カイゼン」を追い込んでいくといった、徹底的な効率化とコストダウンが必要になります。たぶん。

店員のオペレーション:レジ打ち+ドリンク作成を行うスタバと、完全分業制のマック

ではそれっぽくなってきた所で、実際にスタバとマックのオペレーションを見てみましょう。「スターバックス」というブランドへ愛着を持ってもらうためには、そこで働くバリスタさんへの憧れ・専門性を感じてもらうことや、店舗へ行くことを単なる「飲料物の買い物」から「(購入という行為も含めて)コーヒーを楽しむ」という体験に昇華させることが必要です。それらを演出するためか、スタバの店員さんはレジ打ちとドリンク作成の2つの役割を兼任していることが多いと思います(店舗の大きさや時間帯、注文内容にも依りますが)。超フレンドリーに注文を取ってくれた店員さんが、見た目もイケてるコーヒー機器を華麗に使いこなし、ドリンクをサーブしてくれると、やべーかっこいーってなりやすいと思うのです。店員さんとお客さんとの接触の回数・時間を増やすことで、コミュニケーションも取りやすくなり、おもてなしやホスピタリティを発揮する機会も増やすことができます。

対してマクドナルドのオペレーションは、1分1秒を争って食べ物をお客さんに出すための工夫に満ち溢れていると思います。例えば、レジ打ち担当とバーガー作成担当とがきっちり分かれていることが多いと思います。これによって、レジを打ってから調理場まで移動するための数秒が削れます。またレジ打ちとバーガー作成というふたつのスキルを別々の人に任せることで、新人採用時の育成が容易になります。ハンバーガー作成工程は、工場のラインのように綺麗に列が作られており、お店の奥側からレジまでトントンと具材を乗せていけば作れるようになっています。具材の保管場所や、それぞれの調理器具なども徹底的な効率化が図られていることでしょう。

フードの性質:賞味期限短めのスタバに対し、廃棄ロスが出ずらいマック

提供されるフードの性質を見ても、スタバとマックの戦略の違いが見て取れると思います。スタバのドリンク・フードは、どれもかなり消費期限が短そうなものばかり。コーヒー豆だけは比較的日持ちしますが、フラペチーノに使われるクリーム、ラテに使われる牛乳、ケーキ、サンドウィッチ、ドーナツなどは、その日のうちに消費しなければならないでしょう。これらの多くはセントラルキッチンで作っているはずなので、足の速いフードを取り扱うためには、頻度高く輸送する必要がある=物流コストが高くなりやすいのではと想像できます。そんな中でもきちんと利益を出せるのは、高いロイヤリティを持った顧客ベース=喜んで高めの料金を払ってくれる顧客がいなければ成り立ちません。消費期限の短さはフードのロスの出やすさにもつながりますが、それも含めての高めの料金設定だと考えられます。

反対にマックのフードは、セントラルキッチンで前処理が行われた後は、冷凍されてお店に届く材料がほとんど。そのため、当日必要な分を必要なだけ解凍して調理に回せば、理論的には廃棄ロスはほぼ発生しません。廃棄ロスの低減はコストの削減につながりますので、そんじょそこいらの飲食店よりも安い値段でフードを提供することができ、これが競争優位性につながっていると考えられます。

戦略分析のススメ

いかがでしたでしょうか。企業の戦略を分析することは、頭の体操となり楽しい反面、色々な情報を集めて回らないとできないのでなかなか手軽にはできません。しかし飲食店であればお店のオペレーションや商品構成はお店に行けばすぐにわかりますし、スタバとマックのような正反対の会社を選べば、比較も簡単にできます。上記はただの一例であり、それ以外にもお店の作りや立地などを見ていくと、さらに面白い発見があるかも知れません。ぜひ皆様も、戦略分析を戯れでされてみてはいかがでしょうか。

免責事項

上記に書いたことのほとんどは裏取りもしていない、妄想レベルのお戯れです。そのため、間違っている箇所があったらすみません&こっそり教えてください。直しておきます。

あと本稿はスタバでもマックでもなく、バーでビールを飲みながら書きました。やっぱりビール最高。