人事コンサルがベンチャーより大企業を「一般的に」オススメする理由

世の中の問題は、2つに分けられます。答えるのが容易でない問題と、容易な問題です。ガッキーと吉岡里帆のどちらがかわいいかいう質問は、前者の筆頭と言えるでしょう。どちらも国民的美少女というありきたりな言葉で形容するのがためらわれるほどの美貌の持ち主ですし、まぁ最終的には好みで選んでええんちゃう?という身もふたもない結論に達します。

それに比べると、新卒でベンチャー企業と大企業のどちらがいいか?というざっくりした問題はシンプルで、私は常に「一般的には」という枕詞をつけた上で大企業と即答しています。わざわざ「一般的には」という枕詞が何を意味するのかについて、見ていきたいと思います。

あなたは玉と石とを見分けられますか?

ベンチャー企業と一口で言っても玉石混交であり、金の成る木を順調に育てていたり、手堅いビジネスをしている「玉」と呼べるような優れたベンチャー企業はもちろんたくさんあります。しかし、「石」であるベンチャー企業も同じくらいの数だけあるかも知れず、ここでは詳しくは語りませんが、対外的には数年以内にIPOを目指しますと謳っておきながら、内実あと数ヶ月でキャッシュが底をつくという瀕死状態にも関わらず、社長が接待費を湯水のようにキャバクラに注ぎ込むという夜の募金活動を大規模に行っているベンチャー企業も存在したりしなかったりします。

期待を胸に入社したベンチャー企業が、入社数か月後に倒産してしまい、素手で社会にほっぽり出されてしまうことほど怖いことはありません。就職活動の際に問題となるのは、目の前のベンチャー企業が玉なのか、はたまた瀕死状態の石側なのかを見分けられるのかどうか、という点です。学生時代に経営学を専攻し、授業は必要単位数以上に履修してすべて満点を獲得、卒論の対象としてベンチャー企業を徹底研究したため、審美眼は養われています!という方は日本の中でもかなり少数派でしょう。ベンチャー企業への投資を生業とするベンチャーキャピタルですら、一説によると投資の半分は失敗に終わるということからも、ベンチャー企業の見極めがいかに難しいかが分かります。

もちろん大企業も玉石混交と言えるでしょう。しかし、どんなにドイヒーな経営をしていても、不思議なくらいに大企業は(少なくとも数年というタイムスパンでは)潰れません。粉飾決算をした大企業T、不正な製品を販売したグローバル企業W、数年にわたってウン百億円単位で赤字を出した企業・・・に関しては多すぎて例示に困るくらいたくさんあるわけで、なかなか簡単には潰れません。そして倒産したとしても、大体の場合は経営再建先が見つかって事業自体は継続=雇用が継続されるため、そうなったらそうなったで落ち着いた頃に転職すればいいだけです。石側のベンチャー企業を引き当てるより、はるかに低リスクと言えると思います。

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石を引き当ててしまった際の挽回策の有無

そして不幸にも石側のベンチャーを引いてしまった際に挽回策があるのかどうか、というのも判断の際に重要なポイントです。保険があれば、若いうちにちょっとくらいリスキーな勝負に出るというのも悪くありません。

そして、冒頭で「一般的には」という枕詞を強調した最大の理由がここにあるのですが、挽回策を持っている方は結構レアケースだと考えるためです。やや極端な例ですが、分かりやすいのが、ご親族が何かしらのビジネスを営んでおり、新卒でこけても次のポジションが確約されているケース。またご家庭が裕福であるため、海外留学でMBAを取得→選り取り見取りで企業に入るという選択肢を取る余裕がある、というのも例として挙げられると思います。もちろんこれら以外にも様々なケースがあると思いますが、いずれにしても挽回策に恵まれている方はそれほど多くないのではと思います。

もしかすると「ベンチャーでスキルをつければ、何かあっても転職できるはず」と考えている方もいらっしゃるかも知れませんし、それはそれで立派な挽回策になります。しかし、入社してから望む通りにスキルが伸びるかどうかは、個別性と運の要素が高いために、周りはおろか本人にも分からないというのが本当の所ではないでしょうか。私が個人的にインターンシップ等で仕事ぶりを見ていた方なら「向いてる向いていない」といったアドバイス的な何かを言えますが、そうでない場合は無責任なことは言えないため「一般的には」大企業の方が無難では、というお答えをしているという寸法です。

それでもベンチャーに行きたい場合

私が他人様にキャリアに関するアドバイスめいたものを献上する際の基本ポリシーは「大負けする可能性のある勝負は避け、小さく賭けて勝ちを積み上げ続ける」というものですので、上記もかなり保守的な意見に見えるかも知れません。私自身はベンチャー企業(というかスタートアップ企業?)に立ち上げメンバーとして参画したこともあり、ベンチャーでの仕事には大企業では味わえない楽しさや学びがあるのは紛れもない事実です(キャリアのどこかで、最低でももう一回はベンチャーに行きたいとも思っています)。ただ、リスクがある選択肢であることに変わりはないため、しっかり熟慮の上で選ぶ必要があると思っています。

もし特定のベンチャー企業に入りたい、という強い思いがある場合は、そのベンチャー企業のビジネスと近しい領域で仕事をしている第三者の方に、率直な意見を聞くなどして、その企業が健全に経営していることを確認してから選考に進むことをオススメします。また月並みではありますが、様々な企業(ベンチャーだけでなく大企業等も含めて)にインターンとして働いてみることで、よりメリットデメリットや自分自身に合っているかが分かりやすくなると思います。それらのチャンスに恵まれない場合でも、キャリアに関する様々な書籍を読むことで、考え方の幅が広がりより良い意思決定ができるようになるのではと思います。

最後に一つ。私はガッキーより吉岡里帆が好きです。

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