上海のスマート化された日常

窓からの心地よい日差しのおかげで、めざまし時計が鳴る時間より10分早く目が覚める。うだるような暑さが続いた上海の夏も過ぎ、1年のうちで最も過ごしやすい季節がやってきた。手早く身支度を整え、家をあとにする。

すっきりした青空の通勤路は、予想通りの気持ちよさだ。迷うことなく、オレンジがトレードマークのレンタル自転車で30分のサイクリング通勤を選択する。ここ1年で一気に市民権を得たモバイクは、駐輪場にいけば必ず空き車輌が見つかるし、万が一定位置になかったとしても、アプリ上からすぐに見つけ出すことができる。整備された並木通りを、秋の風を切りながらスイスイとこいでいく。オフィスに到着する頃には、すっかり体も頭も温まっていた。

午前中はオフィスワーク。社外のアライアンスパートナーとのやり取りを行うため、早速チャットアプリのWeChatをPC上で立ち上げる。プラットフォームを意識することなく、シームレスなサービスを利用できるのは、マルチデバイス時代には本当に大きなメリットだ。チャットをいくつか見返していくうちに、同僚へのプレゼント代を支払っていないことを思い出した。WeChatでもAlipayでも個人間送金は手軽にできるが、家計簿をつけるならAlipayの方が便利なため最近はAlipayで統一するようにしている。そういえば最近はすっかり現金を使わないものだから、最後に銀行のATMに行ったのは、もう1か月以上も前だっけ。

12時を回り、オフィス近くで同僚と一緒にランチをとる。勤務先がオフィス街であることもあり、なかなかの混み具合だ。こんな時にはスマートフォン上で30秒で決済が完了するAlipayのありがたみを実感する。長い列のレジで、お財布の中の小銭と格闘する煩わしさとは無縁だ。列の後ろの人が大きなお札しか持ってないようで、店員さんに「今おつりがないので、Alipayは持ってませんか?」と聞かれていた。少し前なら「細かいお金ありませんか?」だったのになぁ。お店としても、わざわざ面倒な管理が必要な紙幣よりも、電子マネーで受け取った方が便利だよね。

午後はクライアントといくつかの打ち合わせの予定が入っている。遅れることがないよう、タクシー配車アプリのDidiで所定の時間にオフィスまで来てもらえるように予約をしておこう。流しのタクシーのなかには、お世辞にも快適な運転と言えないドライバーもいるが、Didiならレビューを確認できるから安心だ。資料に目を通しているうちに、クライアントオフィスに到着。支払はもちろんAlipay上で行われる。事前に登録しておけば、領収書はオフィスまで郵送することもできるので、タクシーのレシートで財布がぱんぱんになることもない。

有意義な打ち合わせが終わると、時計もすっかり18時を指していた。今日はそのまま直帰することにしよう。電車に揺られながら、1週間前にAlipay上で購入した投資のことを思い出す。スマホを数回タップすれば、現状の資産状況を一目で確認できる。もちろん日々の消費状況も一目瞭然だ。

今夜は家でゆっくりしたかったため、夕飯はデリバリーを呼ぶことに。Dianpingアプリで好みのレストランを選び、数回タップするだけで注文が完了する。早ければ注文から30分で、熱々の料理が家まで届くのだ。冷やしておいたビールと香港風のチャーハンが、1日を終えた体に染み渡る。もちろんデリバリーのお代は、注文時に終わらせている。

さて、夕飯も終えたのでシャワーを浴びて寝る準備をしよう。明日もまた素晴らしい1日になることを祈りながら。

・・・若干の脚色を混ぜていますが、上記は私が過ごした上海でのある1日について、どのようなアプリを活用しているかに着目して書いてみました。自転車レンタルにはじまり、決済、タクシー予約、資産形成、食事のデリバリーまで、中国では非常に多くの先進的なサービスが展開されており、人々の生活を一変させています。

上記の1日のストーリーから、その「一変ぶり」がどれほどのインパクトをもたらしているかをお伝えできていれば、何よりです。