コンサルファームのキャリアラダーに学ぶ 転職に活きる「魅せ力」とは

コンサル屋さんと言えば、一言目には昇進・昇給のことを、そして二言目には転職のことを口にする生き物であり、朝起きて最初に考えることは「どうやったら昇進できるのか」、一日の締めくくりに「いつ転職するかな」と考えながら床に就いています(独断と偏見あり)。そんな生態を知ってか知らずか、「Don’t be evil」を標ぼうする某検索エンジンは、私に現実を見ろと言わんばかりに意地悪な記事を見せつけてきました。

コンサルは本当につぶしが利く? 転職市場は辛口評価

「正直言うと、今からコンサルに就職するのはオススメしないし、僕自身今すぐ辞めて転職したい。学生には、今のコンサル企業の実情が伝わっていないように思います」
この社員いわく、オススメしない理由は3つ。(1)コンサルタントが増え過ぎて、コンサル出身者の市場価値が下がってきている

コンサルは本当につぶしが利く? 転職市場は辛口評価|NIKKEI STYLE

「コンサルの市場価値が下がっている」という点については、秘伝の術「現実から背いた目」を使って華麗に見過ごすことにして(いや色々と思うところはあるのですが)、一般的にコンサル屋さんが転職市場で評価されやすいというのは「つぶしが利くスキルを持っているから」というスキル面だけでは無く、ひとえに「自分の魅せ方」が上手くなりやすい環境にいるというのも大きなファクターだと思います。そして、魅せ方の上手さというのはなにもコンサルティングファームに在籍しなければ付かないものではなく、事業会社でも同等以上に付けられると考えています。では、どうすれば転職市場で評価されやすい「魅せ力」が身に付くのでしょうか。。

コンサルタントが社内で昇進を目指す際に、必ず言われる言葉とは

会社によって微妙に呼称や定義が変わるものの、コンサルティングファームでの昇進ステップと、それぞれの役割は大体以下のイメージになります。

  • アナリスト/コンサルタント:兵隊、将棋の歩 上司から振られたタスクに取り組む人たち。
  • シニアコンサルタント:一番辞めやすい人たち 大まかな方針を元に、タスクを割り振ったり、自分もそのタスクに取り組む人たち。サブチームをマネジメントすることもあり
  • マネージャー:ピンとキリの差が大きいと言われやすい人たち  プロジェクト全体の方針を考えたり、プロジェクト全体を管理したりする人たち。売り上げ目標を持つことが多い
  • シニアマネージャー:会社への満足度が一番低い人たち 複数プロジェクトの管理をしたり、ポートフォリオを考えたりする人たち。売り上げ目標を持つ
  • パートナー:なんかえらい人たち クライアントとのリレーション構築、ファームの共同経営者として経営に参画する人たち

期中・期末のカウンセラーや上司との面談では、比較的オープンに「次のランクに上がるために、何をすれば良いか」ということをディスカッションしていきます。特にその中で問われるのが「専門性をどこに置くか」という点。コンサルからシニアコンサルに上がるためには、ひとつのサブチームをリードしていくだけの専門的な知識・スキルが求められます。そこからさらにマネージャー・シニアマネージャーに上がろうと思ったら、売り上げ目標が鬼武者のようについてきますから、どの専門領域なら市場性があるのか?どの領域で飯を食っていくのか?という質問に答えられなければなりません。

このように、節目節目で「専門性とは何ぞや」といったことや「売り上げがあげられる専門領域とは何ぞや」というテーマを、カウンセラー・上司とディスカッションし、考え、こんな専門性を身に付けたいのでこんなプロジェクトをやらせてくださいと行動につなげ、またディスカッションし、ということを繰り返していくのがコンサル屋さんという人種です。中途採用の面接の場では、その人に専門性があるかどうかが大きな見極めポイントのひとつですが、コンサル屋さんはこういったことを日頃から考えさせられているため、スラスラ答えられる素地が自然と身につくのだと思います。

プロジェクトを渡り歩く中で問われる「あなたは何ができる人ですか?」

コンサルタントというお仕事は、短ければ1週間単位で、平均的には3~6か月単位のプロジェクトを、くるくる回しながら日々過ごしています。同じクライアントからの継続案件でもない限りは、毎回異なるテーマについて、異なるメンバー構成で異なるクライアントを相手にプロジェクトに臨むことがほとんどです。そのため、プロジェクトが始まる時はまず、社内のメンバー同士ではじめましての挨拶から始めることもしばしばあります。

そんな中でメンバーに聞かれるのは「あなたはこれまでどんな仕事・プロジェクトをやってきて、得意領域は何ですか?」ということ。プロジェクトで掲げた目標の達成に向けて、各人がどんなことができて、どんなことが得意なのか、といったことを把握するのは重要なことですので、自己紹介のノリでそんな話をします。もちろん強みや経歴をただ単に羅列するだけではなく、これから始まるプロジェクトでどのように活かせるのか、また逆にカバーしてもらいたい弱点といった所まで踏み込んだ話が求められますので、初めての顔合わせの場はそれなりに緊張感をもって臨まなければなりません。またプロジェクト全体を管理・監督していくマネージャーやシニアマネージャーであれば、プロジェクト全体をどうしていきたいのか、どんな雰囲気のチームにしていきたいのか、といった決意表明も、チームを引っ張っていくための重要なコミュニケーションです。

改めて書くことでも無いですが、中途採用の面接は自分の強みや、転職先でどのように活かせるかといった点、チームを引っ張る立場であればマネージャーとしてのモットーやプリンシプルといったことを評価される場です。コンサル屋さんは、言ってしまえば四半期~半年に一回は社内で模擬面接をやっているようなものですので、本番の転職の面接でもアピールしやすいのだと思います。

事業会社でも身に付けられる「コンサル流の魅せ力」

上記で見てきたような、自分の専門性を意識する場であったり、自分をどう発信していくかといった場は、もしかすると事業会社ではあまり表立って設定されていないかも知れません。しかし、ポイントさえ押さえれば、どんな会社にいようとも転職の場における「魅せ力」を伸ばすことは、それほど難しいことではないと考えています。

事業会社においても、評価面談といった形で上司との定期的な面談の場は設けられていることが多いと思います。コンサルファームのように、おおっぴらに「次の職位に就くためには」といった話はあまり出ないかも知れませんし、年功序列が強い会社であれば口にしづらい話題かも知れません。そのような場合は、自分の専門性をより高めていくためにはどうすればいいか、(建前でも)自社で活躍していくために長期的に何をしていくべきか、といった形で相談・ディスカッションすることで、自分の専門性ややるべきことが見えてくるのではと思います。

またふたつめのポイントについても、社外の人との交流を積極的に行っていく中で練習しやすいのではと思います。例えば社会人向け大学院などに通えば、社外の人とひとつの課題に向けてチームを組んで活動を行う場が豊富にあると思いますが、そのような場で同様の体験ができるのではないでしょうか。あるいはもっとストレートに、転職エージェントと会う中で色々と試行錯誤してみる、面接の練習をしてもらう、といったことも有効でしょう。

転職を考えていらっしゃる方は、ぜひ参考にしてみてください。