新卒でコンサルファームに行くべきか否か?事業会社出身のコンサル屋さんの答え

巷の就職先人気ランキングでは、所によってコンサルティングファームが上位に食い込んでいるようです。

就活生、特に東大・京大などいわゆる上位校の就活生の間で、2019年もコンサルティングファームの人気が止まらない。両校の学生を対象とした就職人気ランキングでは、並みいる大手商社やメガバンクを抑え、コンサルが圧勝の様相を呈した。

止まらない就活でのコンサル人気、学生が求めるのはスキルとモラトリアム|BUSINESS INSIDER

東大・京大生を対象としたランキングで、トップ10中7つがコンサルティングファームとのこと。コンサルファーム=モラトリアム、という点についても今度思う所をダラダラと書いてみたいと思いますが、こんな仕事をしていると、たまに大学生の方から「新卒でコンサルティングファームに行くべきか、いわゆる事業会社に行くべきか迷っています」といった相談を受けることがあります。ということで、そのような時にコンサル屋さんの私がどのように答えるのかを、だらだらっとまとめてみようと思います。

就職先を選ぶ際の前提条件:確率的に無難な所を狙え

まず前提条件として、私は新卒の就職活動に関してアドバイスをさせていただく時は「確率的に無難な所を狙う」ということを念頭に置いています。

学生から社会人というのは、誰にとってもそれまでの人生の中で一・二を争うくらいの大きなトランジションです。学生時代のアルバイトといったことで疑似体験はできますが、労働に対して対価をもらう立場になるというのは、学生時代のそれとはガラリと変わります。そんな過去にやったことが無いことに対して、自分に適性があるかどうかを見極めることは非常に難しいこと。そもそも就職自体が難しいものである所に、さらに無暗に難易度を上げるような就職先を選ぶべきではない=かけ算でわざわざ難易度を上げる必要は無いという意味で、確率的に無難な所を狙うべし、というのが私の基本の考えになります。

まぁ、いきなりシンガポールの企業立ち上げに参画してみたり、脈絡もなく上海で仕事してみたりと、へんてこりんなキャリアを積んでいる私が、どのクチでそんなことを言うのか、といった感はありますが(笑)。

コンサルティングファーム≠無難な会社(たぶん)

ではコンサルティングファームが事業会社に比べて無難な就職先か?と聞かれると、私は基本的にNOだと思います。

事業会社では、基本的に働く相手は同じ会社の社員であり、最初は「仲間の中」で働くことになります。そのため、右も左もわからなくても、新人の方をきちんと育てよう、フォローしようというマインドセットが強い人たちが周りにいることになります(人に依りけり、といった点はありますが、あくまで一般論として)。しかしコンサルファームの場合、相手にするクライアントは、当たり前の話ですが「同じ会社の仲間」ではありません。彼らに別の会社の新人を育成するモチベーションは皆無。むしろ高い金を払う側なので、ストレートに言うならば「新人なんか連れてきてくれるな」といったマインドセットになりやすい立場です(ややオーバーな表現ですが)。もちろんコンサルファーム側もそんなことは百も承知ですので、できるだけメンバーの多いプロジェクトに入れてクライアントと直でやり取りする部分を減らしたり、仲間内でカバーしたりできる体制を敷こうとしますが、そのような大きなプロジェクトがあるかどうかは言ってしまえば運次第です。そのような「周りが必ずしも味方だけとは限らない」状況に放り込まれる可能性があるため、コンサルファームは無難な会社とは言いづらいと考えています。

もちろん、あなたにコンサルとしての適性があり、そのような環境の中でも初っ端からパフォーマンスを出せる可能性というのも、もちろんあるでしょう。ついでに、選考というのはそのような適性があるかどうかを見る場ですので、内定が取れるということは、適性がゼロということではないはずです。しかし先ほど書いた通り、今まで仕事の経験が無い人が、特定の仕事の適性のある無しを判断するのは非常に難しいことであり、また選考での適正チェックも決して完璧ではありません。

ちなみに「ベンチャー企業を考えています」といった学生の方にお会いすることもありますが、同じく「無難ではない」という理由でベンチャー企業もオススメはしません。そのベンチャー企業が1年先、3年先まで潰れないという保証はどこにあるか考えれば、決して無難な就職先とは言い難いはず。ベンチャーが一律に危ないと言うつもりは毛頭ありませんが、下手すれば数年以内に自分の力が及ばない理由で会社が解散し、突然社会にほっぽり出されるリスクを考えると、相当なリターンが得られることが確約されていたり、どうしてもやりたいことでない限りは、やめといた方がいいのではと思う訳です。

コンサルファームの方が成長が早い、とは限らない

このようなお話をすると、いやでも自分はそんな厳しい環境で早く成長したいんです!といった熱い思いをぶつけられることがあります。ただ、事業会社が相対的に成長が遅いかというと、決してそんなことはありません。

先ほど事業会社は基本的に仲間の中で働くと書きましたが、なぁなぁの仲間という訳では決してありませんし、仕事の質に対する厳しさは事業会社だろうがファームだろうが変わりはありません。というか、なぁなぁでやってる会社なら、とっくの昔に潰れてます。また、事業会社にいれば基本的に自社の情報へ無制限にアクセスできます。それらの情報を通じて、会社というものがどうやって成り立っているのか、他社には言えない経営上の課題や悩みは何なのか、といった深い所まで知ることができるのは、新卒の方々にとって大きな学びになるはずです。しかしコンサルファームとしてクライアントに相対する際には、アクセスできる経営情報の深さには限りがありますし、事業会社のビジネスプロセスの詳細を知るチャンスは、実はそれほど多くありません。

もちろん、事業会社といっても千差万別ですので、成長のスピードを感じづらい企業も世の中にはあるかも知れません。しかし、会社の外に目を向ければ、社会人向けの経営大学院や、他の企業の経験を積めるサービスといったものが山ほどありますし、どうしても環境を変えたければそこではじめて転職を考えればいいだけのことです。

それでもコンサルファームに入りたいという方へ

と、個人的には新卒で行くなら事業会社の方がオススメしやすいものの、コンサルファームは面白い仕事ではありますし、だからこそ自分もこの業界に身を置いています。上記踏まえたうえで、それでもファームに入りたい!という方へのアドバイスとして、月並みではありますがまずはインターンという形で疑似体験をされることをオススメします。

インターン生としてコンサル屋さんのお仕事の疑似体験をすることで、自分がどれくらい適性があるかを知ることができますし、コンサルファームに入ることのメリット・デメリットもより肌身に感じることができると思います。その中で、適性もあるし自信が芽生えたということであれば積極的にチャレンジしてもらえればと思いますし、よく分からんなこの仕事は、と思うようであれば、事業会社も含めて検討するのが良いと思います。インターンに応募するチャンスがなかった!ということであれば、知り合いのツテでコンサル屋さんを営んでいる人にコンタクトし、仕事内容などを根掘り葉掘り聞くのも有効でしょう。また内定を取った後であれば、人事を通じて先輩社員との座談会をセットしてもらうというのもいいでしょう。座談会を通じてこの会社でやっていけるという確信が持てればハッピーですし、そうでないなら一度時間を置いて考え直してみると良いと思います。

何かの参考になれば幸いです。