自転車戦争 in Shanghai

日本でもいろいろな所で取り上げられるようになった、中国のレンタル自転車サービス。アプリ上で決済まで完結することで、レンタル自転車の最大のネックであった「借りた所まで返さなければならない」という弱点を克服した、素晴らしいサービスです。

カラフルな自転車を上海で見かけるようになったのは、私が覚えている限り2016年の初夏頃だったと思いますが、1年も経たないうちに町中いたるところがレンタル自転車で埋め尽くされるようになりました。私も、土日のお出かけから片道30分の通勤まで、いろいろな場面で利用しています。

レンタル自転車の二大巨頭といえば、オレンジのmobikeと、黄色のofoです。自転車にGPSとインターネット接続デバイスを搭載し、アプリ上にどこに自転車があるか地図つきで表示され、さらにアプリを操作するだけで自動で解錠するクールなmobikeに対し、ofoは伝統的なダイヤル式の鍵を持つだけ。眼を凝らして黄色の自転車を探し当てたのちに、アプリを操作すると解錠番号が表示され、ダイヤルロックをくるくる回して利用開始するという、なんともアナログな方式を取っていました。

ITギークとしては、すべてがアプリ上で完結するmobikeのスマートさを絶賛したくなりますが、ビジネスの観点で上手くできているのはofoだと思います。mobikeの仕組みを実装するためには、自転車本体のコストに加えて、鍵を動作させるためのデバイスのコストが重くのし掛かってきます。またデバイスへの投資も去ることながら、それを動作させるためのサーバー側の負担も大きいでしょう。しかしofoの場合は、通常の自転車の製造コストのみ、仕組みとしても自転車の番号に応じて解錠番号を返すだけですのでサーバーの負担も軽くなります。GPSを使った自転車の位置表示は一見便利な機能のようにみえますが、そんなことよりも大量に自転車を配置し、駅から出たら自転車がずらっと並んでいれば、そもそも探す手間が省けます。カラフルな自転車そのものは広告の役割も果たしますので、自転車が増える→人の目にとまる機会が増える→試してみるユーザーが増える→自転車を増やす元手が増える→自転車が増える、というサイクルに突入。そして町中に十分な量の自転車を配置した後に、ダイヤル式の鍵をmobike同様のオートロック式に順次切り替えていき、同等のサービスを提供できる体制を整えたのです(オートロック式への切り替えは、上海市のレンタル自転車サービスへの規制の一環も影響しているようですが)。

このように、コストのかかるデバイスを使って完璧なサービスを目指したmobikeよりも、低いコストで大量に自転車を配置し、町をジャックしたofoの方がビジネス的にセンスが良いと思います。もちろんこれらサービスが市場を制圧したとは言えず、電動式のレンタルサービスが登場するなど、競争が更に激化しています。上海の自転車戦争は今後どうなっていくのでしょうか。