100分の1×100分の1は1万人に1人のキャリア?見落としがちな視点とは

いつの時代のどんな世代にとっても、キャリアは頭を悩ませる問題です。キャリアがうまくいっているかどうかで、生活に直結する収入はもちろんのこと、キャリアを通じた自分らしい人生を歩めるかどうかが大きく左右されます。そのためか、様々な所でキャリアはかくあるべしということが議論されています。

そんな中でしばしば見かけるのが「1万人に1人という希少性を身に付けるためには、1万人に1人を目指すのではなく、100人に1人のものを2つ見つけた方がよい」というものです。100分の1×100分の1で1万分の1になれる!との主張は分かりやすい魅力がありますが、果たしてこれはキャリアに悩める現代人の万能薬となりうるのでしょうか。

100分の1×100分の1の計算式の中で考慮されていないこと

計算式自体が非常にシンプルで力強いため、この主張からは有無を言わさぬ説得力を感じてしまいます。しかし、落ち着いて考えると少なくとも2つの要素が考慮されていないことが見えてきます。

ひとつめは市場性です。いかにキャリアが個人にとって大事と言えど、キャリアとして成り立つかどうかは「その仕事や仕事によるアウトプットが、世の中で求められているかどうか」によって決まります(報酬は一切要らない、というのならともかく)。2つの得意な領域を掛け合わせることができたとしても、その掛け合わせた領域が市場で評価されるかどうかは別問題なのです。

分かりやすい例として、仮に私が100人に1人のプログラミングの能力と、100人に1人のコーヒーを淹れる能力を持っていたとしましょう。掛け合わせれば「1万人に1人レベルの、プログラマーバリスタ」を名乗ることができますが、それによって成り立つ商売はどんなものになるのでしょうか?これで私が起業すると言い出したら、きっといろいろな人が力ずくでも止めにかかるのではないでしょうか。

考慮されていない2つ目のポイントとして、難易度が挙げられます。2つを掛け合わせた方がいいよ!という主張の裏には、100分の1を2つ作ることは、1万分の1を作るよりも簡単だ、という大前提が隠れています。しかし、これはそもそも正しいのでしょうか。

ここはご自身の志向と慎重に向き合う必要がある部分だと思います。人によっては、複数の事柄を同時平行で進めるよりも、1つの事柄に集中することの方が性に合っている、という方もいらっしゃるかも知れません。また、興味があちこちに移ってしまいやすい私のようなタイプは、1つのことに打ち込むよりも、複数のものにめを向けた方が結果を残せる可能性が高いかも知れません。

1万分の1を見つけるために必要なステップとは

100分の1の掛け合わせという考え方自体は興味深いものですが、それだけではキャリアの階段を上る羅針盤つぃては少し心許ないかも知れません。では、どのようにすれば良いのでしょうか。

まず考えるべきステップは、市場性があり、かつ自分の興味の範囲内にあるキャリア領域を見つけることだと思います。いくらキャリアが自分の人生に大きな影響を与えるといっても、それなりの経済的見返りを求めるためには、そのキャリアが「市場で売れる」かどうかの見極めは避けて通れません。とは言え自分が全くやりたくない領域ですと歩み続けることが苦痛になるでしょうから、市場性があり、かつ自分の興味の範囲内にあるものを選ぶ必要があります。キャリアの歩み始めの時期は、興味がどこにあるかが見えづらいこともありますが、さしあたってやりたくないことを消去法で考えていくことも有効です。

その上で、決めた領域の中で1万分の1を目指すために、ひとつのことを突き詰めていくべきなのか、はたまた掛け合わせで達成した方が合理的なのか、キャリアによって求められることと自身の手持ちの能力、そして志向とを考慮しながら考えると良いと思います。特定のキャリアに役立つ複数のスキルを既に持っている場合などは、掛け合わせで上を目指すのが早いかも知れません。一方、ご自身がじっくりひとつのことに向き合うことの方が得意であれば、一点突破で突き進む方が賢い戦術になると思います。

キャリアのお悩みは常に人生につきまとう問題で、私自身も常に頭を悩ませています。しかしそんな難しい問題だからこそ、頭を捻って戦術を考え、七転び八起きで遂行していくことに楽しみを覚えるのかも知れません。1万分の1の作り方、参考になりますと幸いです。