さすらい マラッカ

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ふと思い立ちました。「マラッカ海峡ってどこだ?」Google先生に聞いてみると、なんとシンガポールからバスが出ているではありませんか!

というゆるい成り行きで、マラッカ行ってきました。出発3日前までマラッカに何があるかも知らず、当日までホテルすら予約していないという、ゆるさ満点のさすらいでございますが、私のモットー「パスポートとパンツさえ忘れなければ逮捕されることはない」を胸にゆるゆると旅してまいりました。

マレーシア在住の知り合い曰く、KLが東京とすると、マラッカはさながら京都だそうです。確かに所狭しと高層ビルがにょきにょき成長しているKLとは対照的に、マラッカは空の見渡しがとても良い。またシンガポール・KL共にこの時期は雨季ですが、マラッカ滞在中はほとんど曇ることがありませんでした。内陸のKLとインド洋に面したマラッカではまた気候が違うのでしょうか。

14世紀末から有史に登場するマラッカは、ポルトガル領→オランダ領→イギリス領→日本占領統治→イギリス領→独立という歴史をたどった上に、移民してきた中華圏文化も入り混じってなんかすごい事になっていました。教会が我が物顔で立っている脇では寺が乱立し、建物はマレー様式と思いきや至る所に中華圏のエッセンスがあったり、古都として保護されている割には乱痴気騒ぎのナイトマーケットがあったりと、多様という言葉ではもったいないほどの熟成っぷりです。この訳分からなさのおかげで、町全体が世界遺産入りしたそうな。

特に面白いのは、至る所にあるアンティークショップ。洋の東西を問わずに、この地に流れ着いたものすべてを放り込んだおもちゃ箱のような場所。長い歴史を見てきたものだけが持つ特別な雰囲気は、部外者すべてを飲み込まんとするように見えますが、しかし同時にどこか懐かしさを感じる空気です。店の奥まで足を進めば、不思議と通りの喧騒は消えていき、自分の鼓動すら雰囲気の中に消えていきます。自分と世界の境界線が消えていく心地よい静寂は、他のどこでも味わえない感覚でした。

海に面したこの町は、きっと昔から様々な人やものを受け入れ、そして様々な人やものを見送っていったのでしょう。その中で培われたゆるさ、余裕、包容力が至る所に見られる不思議な場所です。人の往来とともに成長したこの地に住む人々も、明らかに部外者の私をゆるく受け入れ、ゆるくもてなし、そして最高の笑顔で送り出してくれました。まだまだ私もこの町のゆるさの足元にも及びません。精進が必要ですね。