転職の意外な落とし穴 職先企業の転職者比率を気にすべき理由

先日Faebookを見ていたら、某省庁の中途採用の広告が流れてきました。曰く「設立以来、初となる中途採用の募集」ということで、それまで新卒者しか採用してこなかったという採用チャネルに軽い衝撃を受けました。私自身は転職をふらふらしまくっているので感覚が麻痺していますが、とある金融業界に転職した知り合いは「入った部署史上初の転職者だった」と言っており、世の中には生え抜きが当たり前という組織がまだまだ多いのだなと思わされます。

転職先を選ぶ際には、待遇や仕事内容はもちろん、会社のカルチャーがフィットするかどうかなど、いろいろなポイントを気にされると思います。しかし、意外と落とし穴になりがちなのが「その企業は転職者の比率が低すぎないか」というポイントです。

転職者比率が高すぎる会社は、社員が定着しない=働きづらい環境である可能性があり、避けられる傾向にあると思います。しかし、逆に生え抜きが多過ぎる=転職者の割合が低すぎる会社は、様々な難しさが待ち受けている可能性があります。さて、それはどのような内容なのでしょうか。

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転職者が転職後にぶつかる困難とは

一般的に、転職者は前職での経験等をもとに「即戦力」であることを求められて採用されます。しかしいかに経験があると言えど、入社初日から前職と同等のパフォーマンスを上げられる訳ではなく、転職後には様々な困難にぶつかることが多くあります。企業における人材育成に関する書籍「経営学習論(中原淳著)」には、中途採用者がぶつかる困難は下記の4種類に整理されています。

  • スキル課題:これまで持っていなかった、新たな仕事で求められる知識を身に付けること
  • 人脈学習課題:特定の情報を誰が持っているのか理解すること、誰に相談すれば物事がうまくいくのか理解すること
  • 学習棄却:新しい職場で通用しない過去の経験を捨てること
  • 評価基準・役割学習課題:新しい職場で何を期待されているのかを理解すること、新しい職場では何をすれば評価されるのか理解すること

最初のスキル課題は最も分かりやすい部分だと思いますが、人脈学習課題については、例えば組織の中でこの案件は〇〇さん、この案件は××さんを決裁ルートに入れなければならない、といった暗黙のうちに決まっている決済ルールが分からなくて仕事が前に進まない、といったことが発生します。また自分がいくら頑張っていると思っていても、職場からの期待からズレており、一向に評価がなさないといった評価基準・役割学習課題は、本人としても周りとしても非常によくない状態でしょう。

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転職未経験者は、転職者が「何が分からない」かが分からない

先述の書籍の中では、中途採用者だからと言って即日でパフォーマンスが出せる訳ではないこと、むしろ素早い立ち上げを行うためには、意識的に周りが支援することの重要性を説いています。しかし、職場に転職者が多い場合と少ない場合とでは、転職者がぶつかる特有の課題への理解度や、それに対する支援の度合いに差が出てしまうのは容易に想像ができます。

例えば私が所属するコンサルティング業界では、毎月のように中途採用者がバンバン入ってきますので、中途採用に対する理解やサポートは割としっかりしているのではと思います。例えば友人の所属するコンサル会社では、中途採用で入ってきた人へのナレッジ集やFAQは社内ポータルにまとめられており、これらを一通り読めば滞りなく業務ができるような配慮がなされているそうです。これらナレッジは随時入ってくる人たちの手によって更新されていくため、常に最新の情報が掲載されています。また周りの人も、中途採用者がよくぶつかる壁を体感的に理解しているため、積極的に支援しようという姿勢が強く、中途採用者にとっても居心地が良いそうです。一方で、中途採用者の割合が低い、かなり伝統的な日系企業に行った友人の話では、周りの社員からの積極的なサポートというものはあまり感じられず、最初は溶け込むのに苦労をしたということでした。周りの社員の方々からのサポートも、特別なものは感じられなかったと言います(特段意地悪をしようというマインドではないとは思いますが)。これは生え抜きがほとんどの環境に身を置いているため、中途採用者がどのような課題につまずきやすいかがよく分からないこと、また「経験を持った中途採用者を”子ども扱い”することへの気後れ」などもあったのではと想像しています。

もちろん、中途採用比率の多い会社のすべてが「サポートがしっかりしている」訳ではありませんし、その逆も然りではあります。ただ、石橋は叩きに叩いた方が身のためですので、転職先は中途採用者比率の低い会社かどうか、また低い場合は自ら先回りして課題をつぶすよう特に注意した方が良いのではと思います。

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ベタですが、転職は、慎重に。

中途採用に対する周りの目は、「前職での経験を活かしてすぐに成果を出してくれること」というハードルの高いものです。そんな中で設定されたハードルを飛び越し、評価を勝ち得ていくためには様々な事柄を考慮する必要がありますが、その中で転職先の中途採用比率というのは盲点になりがちなポイントです。転職を検討されている方は、ぜひ気を付けてみてください。