外資コンサルが伝授 テレワークを効率的に行うためのノウハウとは

新型コロナウイルスの感染拡大防止や、東京オリンピックの混雑対応のために、大手企業の中でも一斉テレワークを試行する会社が増えてきました。

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、NECは20日、全国のおよそ6万人の社員が一斉にテレワークを実施しました。
もともとは東京オリンピック・パラリンピックの期間中の混雑緩和につながるかどうかの確認が主な目的でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、社員が出社できない場合の業務の在り方など、BCP=事業継続計画の検証も合わせて行うことにしました。

NEC 約6万人の社員が一斉にテレワーク実施|NHK NEWS WEB

コロナウイルスのインパクトは、ウイルス自体の脅威はもちろんのこと、日本での感染が拡大すればするほど国際社会における信用の低下につながりかねません。そのため政府の対応が重要なのはもちろんのこと、イチ個人としても不急不要な外出を行わないといった対策を取ることが大切だと思っています。テレワークはその一環として、積極的に行うべき取り組みです。

私は新卒入社の頃から、物理的に距離が離れた海外メンバーと仕事してみたり、コンサル会社特有の「成果物さえしっかりしてれば、いつどこで仕事してようが関係ない」という文化にどっぷり浸ったりと、テレワークに関してはそれなりのノウハウを蓄積してきました。ここでは、テレワークをいかに効率的に、オフィスでの仕事と同等以上のパフォーマンスを出すためのノウハウを大公開したいと思います。

ちなみに、個人的には「リモートワーク」の方が言葉としてしっくり来るのですが、東京都の公式ページなどでは「テレワーク」という言葉が使われているため、こちらに統一しています。

テレワーク導入「直後」は生産性が下がっても「致し方なし」

これは管理職の方々へのメッセージとなりますが、テレワークに慣れていない社員を一気にテレワークにシフトさせた場合、その直後は生産性がある程度下がっても「致し方なし」と考えていただきたいと思っています。テレワークだけに限らず、働き方やツールを変えた直後は、それらに順応する時間が一定レベル必要であり、順応している間は生産性が下がるのは当たり前のことです。使い慣れていた経費精算システムが新しいものに変わったら、これまで働いていたオフィスが別の場所に引っ越ししてレイアウトが大きく変わったら・・・それらの変化の直後は、慣れるまでに色々な不都合があることは、皆さまも経験されていることだと思います。

これまでFace to Faceで働いてきたところを、バーチャル空間での協業に切り替える訳ですから、不慣れなうちは不便を感じるのも当然のこと。それらの不便な点ばかりに目を向けてしまったら、生産性の向上なぞ望むべくもありません。そのため、テレワーク以降後は生産性が下がるものだと覚悟を決めた上で、いかにその下がり幅を抑えるか、またいかに通常のオフィス勤務と同じレベルまで早く持っていくか、ということに焦点を置いた方が、より健全にテレワーク対応の変化に向き合えると思います。

初っ端からこう書くと、余計に不安を感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、ご安心ください。ポイントさえ押さえれば、チームメンバーはすぐにテレワークへ順応し、かつテレワークの恩恵を受けて生産性を向上させられるはずです。ぜひ意識的に取り組んでいただければと思います。

テレワーク準備編

テレワーク準備編では、全員がテレワークに突入する前に行っておくべきことをまとめていきます。

テレワークに必須のツールに「チームで」慣れておく

テレワークを行うためには、バーチャル上での協業を行うためのコラボレーションツールの活用が欠かせません。しかし、普段SkypeやWebExといったリモートMtgツールを使い慣れていないと、テレワーク中のMtgが非常にフラストレーションとなり、会議どころではなくなってしまいます。これらのコラボレーションツールの持つ機能や、使い方をチーム内で確認し、誰もが使いこなせる状態にしておくことが重要です。下記の機能のうち、ひとつでも不安があるようであれば、きっちり潰しておきたい所です(ツールによってできること・できないことあり)。

  • デスクトップ画面の共有:基本中の基本の機能ですが、デスクトップ画面すべてを映し出す、特定のアプリケーション・ウィンドウだけを映し出す、といった使い分けを押さえておきたいですね
  • デスクトップ画面共有時、相手にパソコンの操作権限を渡す:リモートの相手に、自分のパソコンを操作させることができます
  • ホワイトボード機能:参加している人全員が書き込むことができるホワイトボードを表示させることができます。タッチパネル・タッチペン機能付きPCと組み合わせると、より効果的
  • 音声を電話回線で飛ばしてスマホで受電:パソコンのマイクがしょぼい場合、また普段使い慣れているBluetoothイヤホンなどを使いたい時などに有効です

必要に応じて、コラボレーションツールの便利な使い方を社内のナレッジとしてまとめ、ポータルサイト等に掲載しておくことも効果的でしょう。

テレワークができる物理的な環境が整っているか確認し、お互いの配慮を促す

テレワークを行う場所は、基本的に社員それぞれの自宅になります。しかし社員の自宅の状況は人によって大きく異なり、お子さんがいる家庭もあれば、物理的な環境として仕事部屋を用意しづらい家に住んでいる社員もいるかも知れません。そのため、テレワーク対応において配慮してもらいたいポイントを予めチームメンバーと共有し、お互いに配慮しやすい体制を整えることが重要でしょう。

取引先、クライアントと事前に綿密な調整を行っておく

普段の仕事のステークホルダーは社内の人々だけでなく、取引先・クライアントといった社外の人も含まれます。普段外の会社から訪問を受けるようなチームの場合は、不要不急の訪問をしないように伝える、また何かあった時の連絡方法を事前に取り決めておく。別の会社に訪問をするような立場の方は、訪問先の会社の対応方針を確認し、支障の出ない範囲でテレワークを実施できるよう算段を付ける、といったことが重要です。場合によっては管理職の方が率先して取引先・クライアントと折衝を行い、テレワークがしやすい環境を整えることも大切だと思います。

テレワーク実施編 – チームでの働き方

テレワーク実施編として、個人・チームとしての生産性をどのように上げられるか、というTipsをご紹介いたします。まずはチーム編です

通常のMtgでも気を付けるべきことは、より一層の配慮を

IT技術の発展により、リモートMtgのためのツールがどんどん高機能化していますが、それでもFace to FaceのMtg体験に比べるとまだまだギャップがあります。ノンバーバルコミュニケーションが無いことによる情報量の低下や、誰かが同時に喋った時の聞きやすさ、話へのカットインのしやすさなど、リモートMtgにはまだまだ改善の余地があるように思います。だからこそ、リモートMtgにおいては通常のMtg運営以上に「基礎」を大事にし、効率的に実施できるようにすることが重要だと思います。

下記は通常のMtgにおいても重要なことですが、今一度意識しておきたいポイントです。

  • Mtgのアジェンダ、目的、決議する必要がある事項などを事前に共有する。資料があれば、できるだけ事前共有する
  • 各人がきちんと発言しやすい状態にあるか、気を配る。必要であれば名指しで意見を求めたり、適宜一時停止して意見を出しやすくする
  • 資料名やページ数などを明示的に発言し、今どのポイントについて喋っているのかが分かるようにする
  • 議事メモを画面共有しながら取り、議論の迷子が出ないようにする
  • Mtgの最後にラップアップを行い、関係者間で同じ理解ができるようにする。特に決議事項、宿題(誰がいつまでに何をやるか)は重点的にチェックする
  • 議事メモ・議事録は、会議終了後できるだけ速やかに送る

リモートMtg特有で配慮すべき事柄

上記は通常のMtgでも気を付けるべき項目でしたが、リモートMtgの独特の環境に起因する問題というのもあります。それらに対処するために、以下のポイントにも気を配る必要があります。

  • できるだけ静かな場所で、イヤホンで参加:普段は気にならなくても、リモートMtgだと周りの雑音が結構気になるもの。大人数が集まる会議では、発言時以外はミュートにするのも一手
  • Mtg参加時、発言時に名を名乗る:リモートMtgはその性質上、誰がMtgに参加しているか、誰が発言しているかが分かりづらい時があるため
  • チャット画面を常に開いておく:音声接続に問題が出た場合、一生懸命チャットで話しかけているのに誰も気づいてくれない・・・といったことを防止する
  • 聞いている側は、意識的にうなずく:顔が見えない時、何もリアクションが無いと発言者は「本当に聞いているのか?もしかして音声接続にトラブルがあるのでは?」と不安になりがち。特に人数がそれなりにいる会議では聞き手が黙りがちになるので、明示的にうなずき「聞いている、聞こえているサイン」を出すことが重要

アイデア出しのMtgでは、手書き資料とペイントを積極活用する

進捗確認や、やることがすでに明確になっているMtgであれば、リモートMtgでも全くそん色ない運営ができても、アイデアを発散させるMtgはリモートではやりづらいと感じる方も多いのではと思います。通常のMtgであれば、ホワイボードやポストイットなどを活用して議論を発散させることができますが、リモートMtgでは使える武器も限られてしまいます。

しかし、諦めるのはまだ早いです。Mtgの前に、自分が持っている柔らかいアイデアを紙に手書きでまとめ、写真で撮って事前に送るだけでも議論のたたき台としては十分役を担えることがあります。それらをWindows標準のペイントで開き、周りの意見を聞きながらペイント上でまとめていけば、簡易的なホワイトボードに早変わり。準備編でも書いた通り、リモートMtgツールの中にはホワイトボード機能を備えているものもありますので、それらも積極的に活用していきたい所です。

定期的なコミュニケーションの場を、意図的にセットする

テレワークでよく懸念ポイントとして上がるのが、コミュニケーションの量が減ることで各人の作業効率に問題が出るのではないか、という点です。実際にはコミュニケーションの「質」の方が大事であり、対面だろうが電話越しだろうが関係ないと思うのですが、それはさておき、コミュニケーションはチームで仕事をする上での要ですので、心配になるのも当然かもしれません。

このような心配がある場合は、毎日30分間程度のチェックインMtgを持つなど、意図的なコミュニケーションの場を設定してしまう、というのが効果的な手段のひとつです。人によってはマイクロマネジメントだと思われそうで怖い、という方もいらっしゃるかも知れませんが、テレワークによるコミュニケーション不足を解消するため、といった目的を伝えることと併せて設定すれば、拒否反応を示されることも少ないと思います。

予定表やチャットの状態をこまめに更新し、自分の働きを外部に可視化する

オフィスであればメンバーの姿かたちが見えるため、特段意識しなくても「仕事してる感」を出すことは可能ですし、何をしているかも一目瞭然です。しかしテレワークになると、今誰が何をしているかが分かりづらくなり、管理職側には何とは無しの不安が出てきて細かく確認したくなる→メンバー側はマイクロマネジメントだと感じて上司とのやり取りが億劫になる→管理職側の不安が増大し・・・という悪いループになることもあるようです。別にお互いが意地悪しようと思ってやっている訳ではないはずなのですが、この状態が続くと両方ともに不幸になってしまいます。

また、リアルタイムで連絡が取れないことが複数回続くと、画面の向こうのメンバーは本当に働いているのだろうか・・・という疑念が出てくるのも、人情として仕方ないのかも知れません。話しかけられた側は、たまたま別の用事で離席していたり、遅いランチに出かけていただけなのに、タイミングが悪かったばっかりに、またお互いが不幸な状態に陥ってしまいます。

そこで、予定表やチャットの「状態」に、自分が何をしているかをこまめに更新しておくと、上記のような不毛なやり取りを減らすことができます。作業内容を予定表上に引いておく。ランチの時はチャットの「状態」を離席中にしておく。ランチの時間がズレた時は、予定表に表しておく。こういった細かな配慮をしておくと、不幸な人を減らせると思います。

テレワーク実施編 -個人としての工夫

テレワーク時に、個人として工夫しておきたいポイントをまとめました。

誘惑になりそうなものは「視界から」排除しておく

ひとりで自宅で働くことを想像した時に、自宅にあるテレビや漫画の誘惑に勝てるかどうか、不安に覚えてる方もいるでしょう。しかし人間は意外と単純なもので、テレビや漫画といった誘惑の元となるモノを目に入らないところに置いておくだけで、案外誘惑に流されづらくなるということが言われています。漫画は押入れの中に、テレビには布をかけて直接見えなくするだけでも有効だと思います。

それでも不安な場合は、ケリーマクゴニガル著「スタンフォードの自分を変える教室」に書かれている内容を実践してみてください。自分を律するテクニックが豊富に書かれています。

意識的な気分転換の方法を用意しておく

人によっては、誰ともかかわることなく黙々と作業することをストレスに感じる方もいるでしょう。オフィスにいれば、同僚との何気ない会話でリフレッシュすることができますが、チャットメッセージ越しにカジュアルな会話はしづらいかも知れません。そのため、意識的に気分転換をする方法を用意しておくことで、より生産的に仕事に向き合えると思います。

私の場合は複数の種類のコーヒー豆・お茶の葉を用意して、その日の気分に応じて楽しめるようにしています。また食器の洗い物などはあえて溜めておき、仕事に行き詰った時に一気に片づけるようにしています。コーヒーを淹れている時や、お皿を洗っている時に、ふと仕事のアイデアが浮かぶこともあり、良い気分転換になっていると思います。

ランチ時、仕事終わりなどに散歩を

テレワークをすると、それはそれは深刻な運動不足に陥ります。健康維持のためにテレワークをしているにも関わらず、運動不足になってしまってはプラスなんだかマイナスなんだか分からなくなってしまいます笑。ぜひランチに出かけた際や、仕事が終わった後は、意識的な散歩をするようにしてみてください。

チーム・個人の両面の工夫で生産性の高いテレワークを

いかがでしたでしょうか。テレワークは導入当初こそ戸惑いや不安が出るかも知れませんが、チームで、そして個人で工夫することで、これまでの働き方以上の生産性を実現することができます。ぜひ試してみてください。